愛の完成 2014年製作
愛の完成
田井英祐
貴方と舌が結ばれないままに
呼びあえぬ愛し名は
予兆と非在の間に燃え立つ
痙攣する蒼薔薇
可能性を孕む
貴方の呼び名に
呼応が匂い立ち
対話が開かれる
此方から彼方へ流れる
絶えることない時の流れのもとに
生と死の輪廻の交差が
臨海するまま
世界は編まれて
君から僕-僕から貴方へと生命は繋がれて
ある。
ある。
君は時おりそれを信じないが、
確かにそれはある。
始まりの営みは
夕日と海が交わる夜に始まり
愛に終わった。
僕らが生まれた6500万年前の
愛の果てに
君は編まれてある。
僕は名前を呼ぶ。君は応じる。
呼応の果てに世界は開かれて今ここにある。
もしも世界が、
名付けられることにより
始まったというのなら
きっと
愛しい者に名前を呼ばれた時
僕らは生まれた。
幾千億の朝と幾千億の夜の明け暮れ
貴方と君の幾千億回の愛の交錯
生命の螺旋状の幾億交差が
僕らのたった一つきりの名前により
証明され
それは愛の公式にふさわしい。
僕らの舌が結ばれ、
二人が名前を呼びあうなかで
愛は編まれて
僕ら二人の間に
君は完成する。